理事長挨拶

一般社団法人 日本解剖学会
理事長 八木沼洋行

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この度、岡部繁男前理事長の後任として理事長に選任されました八木沼洋行です。よろしくお願いいたします。

解剖学は、生物体内の構造(形)や現象を詳しく調べる学問領域で、形態学とも呼ばれます。対象とする構造の大きさに応じて、肉眼解剖学、組織学、細胞学などに分けられ、構造が出来上がる過程を時間軸にそって明らかにする発生学、様々な動物間の比較によって構造の意義を解明する比較解剖学なども含まれます。

形態学は生命科学の基盤です。ノーベル賞を受賞したオートファジーやアポトーシス(細胞の自殺)に関する研究も、それらの過程に異常が生じた細胞を顕微鏡の下で根気よく探すという地道な形態学的研究からスタートしています。

近年の分子生物学の進歩によって、生命科学各分野間の研究の垣根は低くなりました。解剖学の各分野でも構造や現象を記載するだけに留まらず、構造の機能的意義や形作りの分子メカニズムを明らかにしようとする研究も盛んになっています。また、ものを見る技術も進歩が著しく、厚みのある生きた組織の中で特定の細胞だけを観察する技術や、一定の立体的な領域の構造を自動的かつ網羅的に電子顕微鏡レベルで観察してしまう技術などが開発されています。今日の解剖学は、このような先端的技術を含め、あらゆる手技・技術を用いて、形へのこだわりを持ちつつ生命現象の謎に迫ろうとする学問分野ということができます。

日本解剖学会は1893年(明治26年)に結成されました。日本医学会に所属する学会の中で最も長い歴史をもつ学会の一つです。現在、約2300人の会員が所属しており、その多くが大学や医療専門職養成機関で解剖学の研究や教育に従事しています。

学会の主な活動は、学術集会の開催、学術誌の刊行、国内外の関連学会との交流、若手研究者の奨励などです。

学会として全国規模の学術集会を年に一度開催している他、6つのブロックごとの支部学術集会を行っています。また、これまで、アジア太平洋解剖学会議(APICA、2002年)、国際解剖学会議(IFAA、2004年)などの国際学会も主催してきました。

本学会が発行している学術雑誌には、年4回発行している英文誌「Anatomical Science International(IF=1.56)」および年1回発行の和文誌「解剖学雑誌」があります。

他学会との交流事業として、日本生理学会とは、合同シンポジウムを定期的に開催している他、これまで2回の合同全国学術集会を開催しています(2011年と2015年)。韓国解剖学会や日本顕微鏡学会とも協定を結んでおり、連携や交流を進めています。

若手の研究奨励を目的に、優れた研究を行っている若手研究者に奨励賞を授与しています。また、最近発足した若手の会への支援も行っています。

会員の多くが解剖学教育に携わっていることから、教育に関する活動も学会の大きな柱の一つです。医・歯学部の解剖学教育に不可欠な解剖実習用遺体は、今日ほとんど「篤志献体」によるものとなっています。これは世界に類を見ない誇るべきシステムで、各大学の献体登録者団体と解剖学教室の先人達が長年の取組を通じて築きあげてきたものです。

近年、医師・歯科医師の技術向上を通して医療の安全性を高めるために、献体された遺体を臨床手技研修に使用させてほしいという臨床医側からの声が高まりました。これを受けて、日本解剖学会は日本外科学会と合同で、献体遺体を手術手技研修に用いることを可能とする「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」を策定し、2012年に発表いたしました。以来、遺体を用いた臨床手技研修を実施する大学が漸増しています。本学会としては、この新しい取組が、今後とも安定的に継続されるよう様々な配慮をしていく責任があるものと認識しています。

以上述べました他にも、学会として対処すべき課題はたくさんありますが、学会内外からの意見をいただきながら適切に対処していきたいと思っています。皆様の、解剖学と本学会への一層のご理解とご支援をたまわりますようお願い申し上げます。